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Fertility
-花籠の女神-
――これは、あなたが大人になったら、あげるからね。
大好きなおばあちゃんから。
目を細めた笑顔で見つめられ。
優しく頭を撫でられながら、諭されるようにそう言われた。
昔の記憶。
そうだ......ずっと忘れていた、記憶。
子供の頃に、こっそりと古い引き出しを背伸びしながら引き出して見つけだした。
キラキラした憧れの、宝物。
あれからどれだけの時が流れた事だろう。
もうとっくの昔に忘れて。
その約束さえ、記憶の中から消え去ってしまっていたのに。
手に取った瞬間。
あの頃の。
優しい記憶が、涙と共に蘇った。
ウランガラスをメインにしたこのペンダント。
アーティスティックワイヤーのガンメタを選んだ時から。
ただ、ひたすらに、アンティークっぽさ、良い意味での"古さ"を求められた←作品なんですが。笑
このアンティークな雰囲気、"古さ"は、私の中では、
大好きなおばあちゃん
という象徴と、どんどん重なっていきました。
透明なウランガラスの周りに、リースのように花が次々と咲き誇ってゆく。
ひとつひとつ、美しい花を摘みとって、花籠に沢山入れていくように。
懐かしく、優しく、美しい思い出が。
空っぽだった花籠の中に、やがて溢れて彩られてゆく。
薔薇の花の形にカットされた、ピンクシェルとピンクオパール。
クイーンコンクシェルや、アメジスト×スモーキー、チェリークォーツなどの、様々な種類の大輪の花々。
かすみ草のような淡水ケシパールと、花の蕾のような、淡水パールのクラシックピンク。
ガーネットのボタンカットは、その間を埋めるような感じで配置していました。
今回は手持ちのフラワーカットの石を様々な種類で盛り込んでまして。
この花のひとつひとつには、それぞれ違った思い出や、豊かさや、愛が象徴されているような気がしました。
作品の全体を見ると、リースのような、花籠のような形になってしまして。
まるで豊穣の女神や、姫ダルマみたいなイメージもあります。(笑
古さやアンティークさはあるものの、すごく縁起の良さそうな感覚で。
豊穣や、豊かさをイメージさせるモチーフが沢山、隠れてる感じがしました。
それを、冒頭で書いた物語と重ね合わせると。
まるで、子供の頃に受け取り損ねていて、そのままにしていた豊かさを。
大人になって、随分と時が経って。
やっっと、受け取れる時期が来た。
そんな感覚なんですよね。
冒頭の物語のようなものは。
作りながら浮かんで来たものなんですが。割とハッキリとストーリーと光景が浮かんでまして。
子供の頃におばあちゃんの家に遊びに行った時。
昔の足踏みミシンなんかが置いてあるようなw
昔ながらのアンティークな物が沢山ある部屋の中で。
古い引き出しが気になって、そっと背伸びしながら開けた時に、見つけた宝物。
それは、おばあちゃんの古い引き出しの中から出てきたアクセサリー。
とか。そんな感じのものなんじゃないかなと思うんですが。
凄くキラキラして見えて。
今思えば、それは子供が持つには高価なものだったのかもしれない。
手に取るだけで、ワクワクとした気持ちになって。目を輝かせながらおばあちゃんに、これ、ちょーだい!と見せに行くと。
優しい笑顔で、そっと諭された。
――これは、あなたが大人になったら、あげるからね。
頭を撫でられながら。
......うん。
そう素直に頷いて。
宝物をおばあちゃんに返した。
絶対!約束だよ。
あの時、指切りげんまんした
小さな約束
子供心に、早く大人になりたい。
そう心に刻んだ。
......小さな思い出。
私自身には、そんな思い出は無いのですが。
今回の作品は珍しく、作りながらハッキリと、こういう光景やストーリーが、ガンガンと浮かんでいました。
そして、この物語には続きがありまして。
いつの間にやら時が経ち。
そんな思い出も約束もとっくの昔に忘れ去り。
大人になって。
おばあちゃんも亡くなっていて。
そんなある日。
そのアクセサリーが、偶然なのか、必然なのか。手元に来るような光景が浮かんだんですね。
母親から手渡されるのか。
または、別ルートなのかはわかりませんけども。笑
だから、受け取った時は、最初は気がつかないんですよ。
これが、子供の頃の、おばあちゃんとの約束のアクセサリーだ、なんて。
なのに、触れた瞬間。
あの頃の記憶が、蘇る。
おばあちゃんの笑顔。
諭すように優しく言われた言葉
小さな約束。
ずっと受け取り損ねていた、豊かさを。
大人になって、受け取ろうとする瞬間。
この作品の形が、そのまま思い出のアクセサリーの形なのか。
といえば、そうではなく。
私の中では、色々な思い出とかエピソードを思い出すキッカケのような作品という感じでして。
この花籠の中から、どんどんと。
小さいながらも、暖かな思い出が、溢れるようにどんどん、湧き出してくるような気がしたんですね。
それは、一言で言えば。
自分は、こんなにも愛されていたんだ。
と、実感するような思い出ばかり。
子供の頃には気がつかなかったけど。
大人になって、その視点が解って初めて気がつくこと。
って多いと思うんですよ。
この作品は、ずっと自分には無いと思っていたり、受け取り拒否していたり。約束した出来事さえ忘れていて、貰えてなかったものを
受け取るタイミングなんだよ。
と、女神様が、教えてくれるような気がしました。
ひとつひとつの花を手渡すように、心温まるあの頃を、思い出せるように。
ですので、物語を表す為にわかりやすい象徴として、"おばあちゃん"と書きましたが。
それは、今の人生だけでなく。
過去生や前世などの思い出もひっくるめての誰かだったりするのかもなと思いました。
大切な思い出。小さな約束。
貴方を大切に思ってくれる人。
大好きな人。
時を超えて。
あの頃、子供だった貴方を愛してくれていた人からの、約束の品。
小さな贈り物。
だったんじゃないかなーと思いました。
とっくの昔に、約束したことさえも。
もう......忘れてたのに。
懐かしく。
心が暖かくなるような。
涙が溢れてくるような。
自分はこんなにも愛されていた。
その証のような。
優しい思い出が、蘇る。
花籠に溢れるくらいに。
優しく抱き留めて。
包まれているような、
愛や、豊かさを感じられる。
――ありがとう。
あの頃の約束、覚えててくれてたんだ......。
今は亡き、彼方からの約束の証。
小さな、贈り物。
子供の頃に憧れた。
記憶の中でキラキラしていたあの宝物は。
手の中で少し、古びてしまっていたけれど。
なのに、それでも。
輝きは、あの頃と変わらない。
溢れる涙が、そう教えてくれる。
私の大切な、宝物。
Fertility
-花籠の女神-
そんなイメージの作品なのかなーと思います。
販売価格 | 15,000円(内税) |
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